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カスタマージャーニーマップ作りの5STEPと活用術☆

カスタマージャーニーマップ(CJM)は、ユーザーが商品やサービスと出会い、購入・利用に至るまでの一連の体験を時系列で可視化するフレームワークです。Webマーケティングやサービス設計の現場では、ユーザー理解を深めるための定番ツールとして広く使われています。

しかし、「名前は知っているけれど、実際にどう作ればいいのかわからない」「テンプレートを見ても、何を書けばいいか迷ってしまう」という声も少なくありません。

この記事では、CJMの基本構造を押さえたうえで、実際に手を動かして作成するための5つのステップを順番に解説します。さらに、現状分析(As-Is)と理想設計(To-Be)の2段階で作成する応用手法や、サービスブループリントなど類似ツールとの使い分けについても紹介します。


目次

カスタマージャーニーマップ(CJM)とは

カスタマージャーニーマップとは、ユーザーが商品・サービスとの関わりの中でたどる一連のプロセスを、時系列に沿って視覚化したものです。「カスタマージャーニー」の「ジャーニー」は、顧客の購買行動における「行程=顧客体験」を意味しています。

ユーザーは、認知・情報収集・比較検討・購入といったステージごとに異なる行動をとり、そのたびに感情も変化します。CJMはこの全体像を俯瞰することで、各ステージでの課題と改善ポイントを明らかにするための道具です。

CJMの基本構造は、横軸にユーザーの行動ステージ(認知→情報収集→体験→購入など)、縦軸にユーザーの行動・タッチポイント・思考/感情・課題を配置したマトリクス形式になっています。

カスタマージャーニーマップの基本構造を示すマトリクス図。横軸に認知・情報収集・体験・購入のステージ、縦軸に行動・タッチポイント・思考感情・課題を配置

このマトリクスに情報を埋めていくことで、ユーザーが各段階でどのような行動をとり、何を考え、どこに不満や課題を抱えているのかが一目でわかるようになります。


CJMを作成する4つのメリット

CJMをわざわざ作成する意義はどこにあるのでしょうか。主に4つのメリットがあります。

CJM作成の4つのメリット。ユーザー理解の深化、課題の抽出と優先順位付け、チームでの共通認識、理想体験の設計

1. ユーザー理解を深められる

CJMを作成すると、ユーザーの行動・思考・感情を時系列で一覧できるようになります。「なぜこのタイミングで離脱するのか」「どの瞬間にポジティブな感情が生まれるのか」といった、断片的には見えにくいユーザーの全体像を立体的に把握できます。

2. 課題を抽出し優先順位をつけられる

現状のユーザー体験(As-Is)をCJMに整理すると、どのステージでユーザーの不満が発生しているかが明確になります。洗い出した課題に対して「発生頻度」「深刻度」「ビジネスインパクト」などの基準で優先度をつければ、改善すべき箇所の順番が見えてきます。

3. チームで共通認識を持てる

ユーザー体験を可視化することで、マーケティング・デザイン・開発など異なる職種のメンバー間でも同じ認識を共有できるようになります。「ユーザーがここで困っている」という共通理解があれば、施策の検討や意思決定がスムーズに進みます。

4. 理想のユーザー体験を設計できる

現状(As-Is)の課題を把握したうえで、理想(To-Be)のCJMを作成することで、あるべきユーザー体験を具体的に描くことができます。課題を解決した後にユーザーがどのような行動をとり、どんな感情を抱くのかを設計し、施策に落とし込んでいくことが可能になります。


CJMを作る前にやるべき2つの準備

CJMの作成に取りかかる前に、「目的とゴールの設定」と「ペルソナの設定」という2つの下準備が必要です。この準備を怠ると、作成しても効果が十分に得られません。

1. 目的とゴールの設定

まず、「何のためにCJMを作るのか」を明確にしましょう。CJMに限らず、目的なくフレームワークを使っても成果にはつながりません。たとえば次のように設定します。

目的の例:新商品の販促施策を改善するため
ゴールの例:購買行動を可視化し、離脱が起きている箇所を特定して改善案を出すこと

目的とゴールが曖昧なままだと、CJMに載せる情報の粒度がばらつき、使いものにならないマップになってしまいます。

2. ペルソナの設定

次に、商品・サービスのユーザー像を具体的に設定します。「20代男性」のような曖昧なターゲットではなく、職業・年収・価値観・休日の過ごし方まで踏み込んだ人物像がペルソナです。

ペルソナを具体的に設定しておくことで、「この人ならどう行動するか」「何を感じるか」がリアルに想像でき、CJMの各項目を埋めるときに具体性のある内容が書けるようになります。


【基本編】CJM作成の5ステップ

準備ができたら、いよいよCJMの作成に入ります。5つのステップに沿って進めれば、はじめての方でも作成できます。

CJM作成の基本5ステップ。STEP1縦軸の設定、STEP2横軸の設定、STEP3行動とタッチポイント記入、STEP4思考と感情を記入、STEP5課題を分析

STEP 1:縦軸(項目)を設定する

最初に、CJMの縦軸に入れる項目を決めます。一般的には次の4つが入っていれば十分です。

行動:「店舗で試着する」「Webサイトで比較する」など、ユーザーが実際にとる行動
タッチポイント:SNS・Webサイト・店舗など、顧客との接点となるチャネルや場所
思考・感情:「かっこいい、欲しい」「ちょっと高いかも」など、行動時にユーザーが考えたことや感じたこと
課題:「サイズが合わないかも」「価格の妥当性がわからない」など、ユーザーが抱く不安・不満・不足

STEP 2:横軸(ステージ)を設定する

次に、ユーザーがたどるプロセスを時系列で区切ってステージを設定します。商品やサービスによって変わりますが、たとえば次のように区切ります。

認知・興味情報収集・比較検討来店・体験購入

ステージを区切るコツは、タッチポイントが変わるタイミングで分けることです。特にオンラインとオフラインが切り替わる場面では、ユーザーの行動や感情が大きく変化するため、ステージを分けておくと課題を発見しやすくなります。

STEP 3:行動とタッチポイントを記入する

縦軸と横軸を設定できたら、各ステージにおけるユーザーの行動とタッチポイントを書き込みます。最初に設定したペルソナをイメージしながら、できるだけ具体的に記入するのがポイントです。

たとえば「認知・興味」のステージであれば、「好きなインフルエンサーがSNSで着ている服を見て興味を持つ」「タッチポイント:Instagram」のように、行動とチャネルをセットで記入します。各ステージにつき行動は1つに絞る必要はなく、思いつく限り書き出しましょう。

STEP 4:思考・感情を記入する

続いて、各ステージでユーザーがどのように考え、感情がどう動くかを記入します。

「情報収集・比較検討」のステージであれば、思考は「どこのブランドだろう?いくらくらいするのだろう?」、感情は「好きなブランドで嬉しいけれど、ちょっと値段が高いかも…」のように記入します。

感情については、ポジティブ・ネガティブの度合いを「○・△・×」や折れ線グラフで可視化すると、どのステージで感情が下がっているかが一目でわかるようになります。

STEP 5:課題を分析する

最後に、各ステージで「ユーザーが不安・不満・不足を感じるであろう課題」を分析します。課題を見つけるコツは、ユーザーの感情がネガティブに向いているところを注視することです。

たとえば「来店・体験」のステージでは、「自分に合うサイズが置いていない」「店員に商品知識がなく案内できない」「コーディネートを試せる環境がない」といった課題が考えられます。1つのステージでも複数の角度から課題を洗い出しましょう。

ここまで作成できたら、課題に対する解決策を検討し、ゴールに近づくための優先順位を決めて施策を実行していきます。


【応用編】As-IsとTo-Beの2段階CJM

基本の5ステップでもCJMは作成できますが、さらに効果を高めたい場合は、「現状の体験(As-Is)」と「理想の体験(To-Be)」の2つに分けて作成する方法があります。ユーザーインタビューなどの定性調査をもとにした、より実践的な手法です。

As-IsとTo-Beカスタマージャーニーマップの流れ。左側にAs-Is(STEP0〜3)、右側にTo-Be(STEP1〜4)を配置し、課題発見から改善への流れを示す

As-Isマップの作り方

As-Is(現状)マップでは、ユーザーインタビューで得た定性情報をもとに、いまのユーザー体験を見える化していきます。

STEP 0:ユーザーインタビューの実施
商品やサービスを実際に利用しているユーザーにインタビューを行い、行動・思考・動機などの定性情報を収集します。

STEP 1:タスク整理
インタビュー結果から、ペルソナ対象ユーザーの特徴的な発言や行動を抽出し、類似するものをグループ化して時系列順に整理します。タスクのタイトルは「販売価格を見る」のように、ある程度の抽象度で付けるのがコツです。

STEP 2:タスクのグルーピング
整理したタスクをさらにグルーピングし、グループごとにステージ名を付けます。これがCJMの横軸(ステージ)になります。

STEP 3:As-Isマップの作成
グルーピングしたタスクをもとに、行動・タッチポイント・思考・感情・課題をマップに落とし込みます。課題を抽出する際は、フェーズごとに課題をグルーピングし、発生頻度や深刻度で優先度をつけるのがポイントです。

To-Beマップの作り方

To-Be(理想)マップでは、As-Isで見つかった課題を解決した後の、あるべきユーザー体験を設計します。

STEP 1:課題の発生メカニズムを解明
As-Isマップで見つかった課題に対して、「付帯状況」(課題が発生する瞬間の状況)、「現状対策」(ユーザーが現在とっている解消手段)、「満足状況」(その手段の不満点)の3つに分解して分析します。

STEP 2:課題の解決策を検討
ユーザーが課題をゼロにするだけでなく、「自由で豊かな状態」(ゲインポイント)になるための施策を検討します。「課題を解決できるか」「付帯状況を踏まえているか」「現状対策の不満を改善できるか」「ゲインポイントを達成できるか」の4つの観点でチェックしましょう。

STEP 3:解決策の選別
施策案が多い場合は、「課題の大きさ(発生頻度×深刻度)」「課題解消の強度」「実現までのハードル」「上位コンセプトとの整合性」の4指標で評価・選別します。

STEP 4:To-Beマップの作成
As-Isマップをベースに、選んだ解決策を実現した場合にユーザーの行動がどう変化するかを描き、あるべきユーザー体験をマップとして作成します。


CJMを活かすマーケティング手法

CJMはそれ自体がゴールではなく、マーケティング施策を効果的に設計するための指針です。特に相性の良い3つの手法を紹介します。

コンテンツマーケティング

自社でコンテンツを制作・発信して認知拡大やファン獲得を目指す手法です。ユーザーが各フェーズでどのような課題や情報ニーズを持っているかをCJMから読み取ることで、適切なコンテンツを適切なタイミングで届けられます。たとえば、認知段階にはオウンドメディアの記事、購入検討段階にはホワイトペーパー、購入後にはメルマガといったように、フェーズごとにタッチポイントとコンテンツを設計できます。

SNSマーケティング

SNSマーケティングでは、新規顧客層の獲得を目的とした情報発信が中心になります。CJMをもとに、どのような情報を発信すればSNSユーザーが新規顧客になりうるかを考えることが大切です。また、購入後のユーザーがポジティブな投稿をしてくれる仕組みや、「いいね」「シェア」を誘発する体験の設計にもCJMが役立ちます。

Webサイト・LP制作

Webサイトを制作する際には、CJMの各フェーズで必要な情報が抜け漏れなく掲載されているかを確認できます。LP(ランディングページ)を制作する場合は、どのフェーズのユーザーが流入してくるかを想定して構成を設計することで、態度変容を促す効果的なページが作れます。


CJMと類似ツールの違い

CJMに似たフレームワークはいくつか存在します。それぞれの特徴を理解し、目的に応じて使い分けることが大切です。

CJMと類似ツールの比較表。カスタマージャーニーマップ、サービスブループリント、エクスペリエンスマップ、ユーザーシナリオの視点・形式・範囲・用途を比較

サービスブループリントとの違い

CJMがユーザー(顧客)側の体験に焦点を当てるのに対して、サービスブループリントはユーザー側のプロセスとサービス提供側のオペレーションの両方を図示したものです。ユーザーの行動に連動して、裏側ではどのような業務が動いているかを可視化することで、サービス全体の改善ポイントを見つけられます。

エクスペリエンスマップとの違い

エクスペリエンスマップは、特定の製品やサービスに限定せず、ある分野や領域全体におけるユーザーの体験を広く図示するものです。CJMより俯瞰的にユーザーの体験を捉えたいときに適しています。さまざまなサービスに触れる場面や状況を横断的に表現できるのが特徴です。

ユーザーシナリオとの違い

ユーザーシナリオは、CJMと同様にユーザーがゴールに向かうプロセスを示すものですが、テキストベースで作成する点が異なります。チーム内での簡易的な認識合わせにはユーザーシナリオを、クライアントも交えた共有や議論にはCJMを、というように使い分けるのが効果的です。


まとめ

カスタマージャーニーマップ(CJM)は、ユーザーの行動・思考・感情を時系列で可視化し、課題を発見して施策に展開するための強力なフレームワークです。

作成の基本手順は、縦軸(項目)と横軸(ステージ)を設定し、行動・タッチポイント・思考/感情・課題を記入していく5ステップです。さらに、As-Is(現状)とTo-Be(理想)の2段階で作成することで、現状の課題発見から理想の体験設計までを一貫して行えます。

CJMは作って終わりではなく、コンテンツマーケティング・SNSマーケティング・Webサイト制作などさまざまな施策の設計指針として活用することではじめて価値を発揮します。また、サービスブループリントやエクスペリエンスマップなど類似ツールとの使い分けも意識しながら、目的に合った手法を選択していきましょう。


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