MECE(ミーシー)とは?まずは基本を押さえよう
MECEは、Webマーケティングや経営戦略の現場で頻繁に使われるロジカルシンキングの基礎概念です。まずは読み方と意味、そして「MECEになっていない」状態を例で見ながら、感覚をつかんでいきましょう。
MECEの読み方と意味
MECEは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字をとった言葉で、日本語では「相互に排他的で、全体として網羅的」と訳されます。かみくだいて言うと「お互いにダブっておらず、全体としても漏れがない」分類のことです。
注意したいのは、MECEはテクニックやフレームワークの名前ではないということ。あくまで「漏れなく、ダブりなく整理されている状態」を指す言葉です。後ほど紹介するSWOT分析や3C分析などの各種フレームワークは、MECEに分類されているからこそ便利に使えるのです。
「MECEになっていない」例で理解する
言葉の説明だけでは分かりにくいので、身近な例で考えてみましょう。「携帯電話を使っている人」を分類するとして、次のように分けたらどうでしょうか。
- iPhoneユーザー
- Xperiaユーザー
- Huaweiユーザー
一見きれいに分かれているように見えますが、実はMECEになっていません。理由は、上記3メーカー以外のスマホを使っている人や、そもそもガラケーを使っている人が「漏れている」からです。
正しくMECEに分類するなら、まずは「スマートフォンユーザー」「ガラケーユーザー」「そもそも携帯電話を持たない人」のように、全員が必ずどこかに当てはまり、かつ重複もない切り口で分ける必要があります。
MECEは「全員がいずれかに入る(漏れがない)」かつ「同じ人が2か所に入らない(ダブりがない)」状態。複雑な物事を整理して、判断ミスや見落としを防ぐための土台になります。
MECEを使うとどう役立つ?日常とビジネスの具体例
MECEの考え方は、ビジネスの場面に限らず日常生活でも役に立ちます。ここでは「スキー旅行の準備」と「SaaSの売上分析」の2つの例で、MECEが現場でどう機能するかを見てみましょう。
日常生活の例:スキー旅行の買い物リスト
初めてスキーに行くことになり、必要なものを買い揃える場面を想像してください。思いつくままに「ゴーグル、手袋、スキー板…」とリストアップしていくと、たいてい何か買い忘れたり、同じものを2つ買ってしまったりします。
そこで役立つのがMECEです。まずスキー用品を大きなカテゴリで分類してみます。
- 身につけるもの(ウェア、グローブ、ゴーグル、帽子)
- 滑るための道具(スキー板、ストック、ブーツ)
- 持ち物(リフト券入れ、財布、スマートフォン)
このように大きな枠を先に決めてから、それぞれのカテゴリ内で必要な物を洗い出すと、買い忘れもダブり買いも防げます。「全体像を先にMECEで分けて、そのあと中身を詰める」というのが、MECEの最も基本的な使い方です。
ビジネスの例:SaaSの売上を分解して問題を見つける
もう少しビジネス寄りの例として、SaaS企業の「売上が伸び悩んでいる」という課題を考えてみましょう。担当者の勘で「営業が弱いからだ」「カスタマーサクセスの解約防止が甘い」と決めつけてしまうと、本当の原因を見逃しやすくなります。
そこで、まず売上を次のようにMECEに分解します。
- 新規顧客の売上 + 既存顧客の売上
- 新規顧客の売上 = 新規契約数 × 平均単価
- 既存顧客の売上 = 継続率 × 既存顧客数 × アップセル単価
こうして全体像を整理したうえで「どこに問題があるか」を仮説立てしていくと、漠然とした議論にならず、本当に取り組むべき課題(イシュー)にたどり着きやすくなります。
分析を始める前に「何のためにMECEに分けるのか」という目的をはっきり言葉にしておきましょう。目的がぼやけたまま分類を始めると、どこまで細かく分ければよいかが分からなくなり、作業が止まってしまいます。
MECEに分類するための4つの切り口
MECEに分類するときに使える切り口は、大きく4つに整理できます。どのパターンで分けるかを意識すると、初心者でも分類しやすくなります。
①対照的な概念で分類する
最もシンプルな切り口は、相反する2つの概念で分ける方法です。「男性と女性」「新規顧客と既存顧客」「都市部と地方」「BtoBとBtoC」など、片方に当てはまらなければもう片方、という二者択一になるため、ダブりも漏れも起きにくいのが特徴です。
たとえばWeb広告のターゲット設計で「PCユーザーとスマホユーザー」と分ければ、それだけで全体をきれいに2分割できます。最初の一歩としてとても扱いやすい切り口です。
②因数分解で分類する
因数分解は、ひとつの数値や要素を構成要素ごとに分解する切り口です。MECEのなかでも特によく使われ、ビジネス現場で最も応用範囲が広いパターンです。
たとえば「売上」は「客数」と「客単価」の積として分解できます。さらに「客数」は「新規客」と「リピート客」に分けられます。Webサイトの「コンバージョン数」も、「セッション数」と「コンバージョン率」に分解できます。このように数式の形で要素を切り分けると、自然と漏れもダブりもなくなります。
③プロセスで分類する
時間の流れや手順に沿って段階で分けるのがプロセスでの分類です。仕事の工程や顧客の行動を整理するときに役立ちます。
代表例は購買行動モデル「AIDMA」で、消費者がモノを買うまでの心理を「注意 → 興味 → 欲求 → 記憶 → 行動」という5段階に分けています。Webマーケティングの現場では、認知から成約までの導線を「集客 → 育成 → 商談 → 受注」と段階で見るのも、プロセスによるMECEの一例です。
④尺度で分類する
年齢、年収、企業規模など、連続した数値の軸を区切って分けるのが尺度による分類です。「20代/30代/40代/50代以上」「従業員数100名未満/100〜500名/500名以上」など、ある基準で線を引いていきます。
後ほど紹介する「プロダクトライフサイクル」も、製品の一生を時間軸という尺度で「導入期・成長期・成熟期・衰退期」の4段階に区切ったMECEの応用例です。
MECEを活用した代表的なフレームワーク7選
マーケティングや経営戦略の世界で「定番」と呼ばれるフレームワークの多くは、MECEの考え方で組み立てられています。ここでは特に押さえておきたい7つを、どの切り口でMECEに分けているかとあわせて紹介します。
SWOT分析
自社を取り巻く環境と自社の現状を整理して、ビジネスチャンスを見つけるためのフレームワークです。内部と外部、プラスとマイナスという2つの対照概念を組み合わせ、「強み・弱み・機会・脅威」の4象限に分けます。対照的な概念によるMECEの代表例です。
3C分析
市場環境を「市場(顧客)・競合・自社」の3つの要素に因数分解するフレームワークです。3Cを使うと、自社の置かれている環境を多角的かつ漏れなく整理できます。Webマーケティング戦略を立てる最初の一歩としてよく使われます。
バリューチェーン
事業活動を「仕入れ→製造→物流→販売→サポート」のように、価値を生む流れに沿って分解するフレームワークです。プロセスによってMECEに分けることで、どの工程に強み・弱みがあるかが見えてきます。
プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)
「市場成長率」と「市場におけるシェア」という2つの軸で、各事業を4象限にプロットするフレームワークです。対照的な概念を2つ組み合わせることで、経営資源をどの事業に振り分けるかを判断します。
プロダクトライフサイクル
製品が市場に出てから消えるまでを「導入期・成長期・成熟期・衰退期」の4段階に分けるフレームワークです。時間という尺度を使ったMECEの代表例で、製品ごとに打つべき施策の優先順位を考えるときに役立ちます。
4P(マーケティングミックス)
マーケティング戦略を実行する際の4つの要素「製品(Product)・価格(Price)・流通(Place)・販売促進(Promotion)」を整理するフレームワークです。戦術を因数分解でMECEに分けています。
購買行動モデル
AIDMAやAISAS、最近ではDECAXなど、顧客が商品を知ってから買うまでの心理プロセスを段階で表したモデルです。顧客行動をプロセスでMECEに分けることで、各段階に合わせた施策を設計できます。
フレームワークを丸暗記する必要はありません。「これは対照概念」「これは因数分解」と切り口を意識すれば、自然と覚えられます。実際の業務でも「今は3C」「次は4P」と切り替えながら使うイメージを持つとよいでしょう。
初心者がやりがちな注意点:分類自体を目的にしない
MECEはとても便利ですが、初心者がつまずきやすい落とし穴があります。それは「きれいに分類すること自体が目的になってしまう」というパターンです。
たとえばスキー用品の例で、スキー板を「オールラウンド/フリースタイル/デモ/レーシング…」と細かく分け始めると、本来の目的である「買い忘れを防ぐ」から遠ざかってしまいます。スキー板を1本買うのが目的なら、お店の人と相談すれば十分です。
MECEはあくまで「目的を達成するための手段」のひとつ。次の3点を意識すると、現場で迷子になりません。
- 分析を始める前に「目的」を言葉にする
- 目的を達成できるレベルまで分けたら、それ以上は深掘りしない
- 1回でMECEに分けられなくても気にせず、何度か試して整える
「完璧にMECEにすること」を追いかけると、分析が止まってしまいます。まずは7割くらいの精度で大まかに分け、議論しながら整えていくのが現場での進め方です。
まとめ
MECEとは、物事を「漏れなく、ダブりなく」分類する考え方です。ロジカルシンキングの基礎であり、Webマーケティングの現状分析や問題解決に欠かせない土台になります。
本記事の要点を整理しておきましょう。
- MECEは「状態」を指す言葉で、テクニックやフレームワーク名ではない
- 分類の切り口は「対照概念・因数分解・プロセス・尺度」の4つ
- SWOT・3C・バリューチェーン・PPM・PLC・4P・購買行動モデルなどの定番フレームワークは、すべてMECEで組み立てられている
- MECEに分類すること自体を目的にせず、「何のために分けるのか」を常に意識する
最初から完璧にMECEに分けられる必要はありません。まずは目の前の課題をひとつ取り上げて、「対照概念で分けるとどうなる?」「因数分解するとどうなる?」と頭の体操をしてみましょう。何度か繰り返すうちに、自然と分類のセンスが身についていきます。