職業訓練というと、実際にどのようなものなのか分かりにくいものですよね。今回私が皆さんにシェアしたい体験談は、自分自身が5回も職業訓練を受けた経緯と、その中で得た様々な経験、そしてその経験がどのように自身のスキルアップや就職活動に活かせたのか、という部分に重点を置きます。
また、今年私が受講したeラーニングコースについての詳細や、そのメリット・デメリットも紹介します。
これから職業訓練を受けようと考えている皆さん、ぜひ参考にしてください。
さあ、私のリアルな職業訓練体験をご覧ください!
1. 【はじめに】職業訓練とは
職業訓練(公的職業訓練)とは、厚生労働省がハローワークの求職者を対象に実施している訓練です。職業相談等を通じて受講が必要である場合に、再就職の実現にあたって必要な訓練を実施しています。また、職業訓練には主に<公共職業訓練>と<求職者支援訓練>があります。
1-1 公共職業訓練(離職者支援訓練)
公共職業訓練(離職者支援訓練:以下、公共職業訓練でお伝えします)とは、国が主に雇用保険を受給している求職者の方を対象に、就職に必要な職業スキルや知識を習得するための訓練で、様々なコースが無料(テキスト代等は自己負担)で受けられます。
※在職者や高等学校卒業者の方などを対象とした高度な職業スキルや知識を習得するための訓練も実施しています(原則、有料)。
ハローワークでは、様々な職種についての職業訓練が紹介されています。具体的な職業訓練の内容としては、事務的パソコンスキルや一般的な専門技術、また特定の業種における業務内容等、多様な分野にまたがります。また、場所や時間帯も様々で、自分のライフスタイルに合わせて選べるのも魅力です。公共職業訓練についての詳しい説明は下記をご覧ください。
1-2 求職者支援訓練
求職者支援訓練は、主に雇用保険を受給できない求職者の方(受給が終わった方も含む)を対象で、こちらも就職に必要な職業スキルや知識を習得するための職業訓練を無料(テキスト代等は自己負担)で実施しています。求職者支援訓練についての詳しい説明は下記をご覧ください。
2. 職業訓練を実際に受けてみた体験談
私は学生時代にできなかった海外留学への思いが捨てきれず、大学卒業後、派遣社員として働いてお金を貯めては留学し、帰国してはまた派遣で働きお金をためて留学、というのを繰り返していました。ですので英語以外にこれといったスキルがあるわけでもなく、もっと自分をアピールできるスキルをつけたいな思っていたところ見つけたのが職業訓練でした。
今の時代、スキルアップは絶対的な必要性となっています。私がこれまで職業訓練を5回も受ける過程で得た経験について、リアルな体験と考察を交えながらお伝えしていきます。これから職業訓練を受けようとしている皆さん、そして何か新たな挑戦をしたいと思っている皆さんに読んで頂きたいと思います。
2-1 今まで通ったことのある職業訓練
実際私が今まで受講した訓練は、Webデザイン、日本語教師、フラワーデザイン、アパレルパタンナー、Webマーケティングの5コースでした。コースについては後にも触れますが、いかに多種多様なコースがあるかおわかりいただけるのではないでしょうか。
また期間も様々で一番短いものはフラワーデザインで3ヶ月、長いものはアパレルパタンナーで1年でした。友達には2年間陶芸コースに通い、現在セラミックアクセサリーを作っている人もいます。
職業訓練に参加することで、私は新たなスキルを身につけ、自分自身の見聞やスキルが広がりました。また、異なる専門知識や経験を持つ他の参加者と共に学ぶことで、年の離れた友達や新たな視点を得ることができたのも財産だと思っています。
2-2 実際に就職に繋がった職業訓練
職業訓練の目的は新たなスキルを得ることで就職に繋げることですが、実際に受講した職業訓練に関連した就職ができたのはアパレルパタンナーとWebマーケティングのコースのみでした。
ただし、他の訓練も将来役立てたいと思っていますし、WebデザインはWebマーケティングにも役立っています。直接仕事には結びつかなくてもフラワーデザインなどは日々の生活で役に立っています。
3. 体験談から見る職業訓練のメリット・デメリット
私自身が5回も職業訓練に参加した経験から、このような訓練が持つメリットとデメリットについて語らせて頂きます。
職業訓練は、一見すると手厚い支援を受けられる素晴らしい機会のように思えますが、実際には良い面だけでなく考慮しなければならない様々な側面が存在することを理解しておくことは大切です。
これから職業訓練を受けようと考えている人にとって、現実的な視点からのアドバイスが共有できれば幸いです。
3-1 職業訓練のメリット
まずは、私が経験した職業訓練のメリットについてお話しします。
一つ目は、専門的なスキルが身に付くことです。Webデザインや日本語教師養成、フラワーデザインなど、多彩な分野のスキルが習得可能で、自分の好きな分野で深く学ぶことができます。
二つ目は、新たな就職先やキャリアパスを見つけられる可能性があること。私自身が職業訓練を通じて、関連職に就くことができた経験があります。
三つ目は、専門の指導者から直接教わることができる点。往々にして、その分野で活躍する経験豊富なプロから直接学べることは、大きなメリットといえます。
四つ目は、同じ志を持つ仲間を見つけやすいこと。職業訓練のクラスは、一緒に勉強する仲間との絆が生まれやすい環境でもあります。
五つ目は、学んだことを即実践できる環境があること。最初に受けたWebデザインの訓練では、最後の1ヶ月間がOJTとなっており、訓練中に実際の仕事現場での体験機会が設けられていました。実際の職場の雰囲気や、仕事としてどのようなスキルが求められるのかがわかり非常に勉強になりました。
また、制度面としては、●無料で学べる(テキスト代などは除く)、●雇用保険が延長されたり、前倒しできる、●雇用保険受給資格者でなくても給付金がもらえる(諸条件をクリアする必要あり)、●失業認定の手続きが楽になる(「求職者支援訓練」の場合は月に一度「指定来所日」があります)などのメリットがあります。
3-2 職業訓練のデメリット
一方、デメリットもないわけではありません。
一つ目は、訓練期間中の収入が途絶える可能性があること。職業訓練は長期に及ぶこともあり、その期間中は収入が入らないこともあります。
二つ目は、短期間で多くのことを学ぼうとすると、内容が浅くなりがちである点。
三つ目は、すべての職業訓練が就職につながるわけではないこと。私自身、2つの職業訓練で就職が決まった経験がありますが、それが全てではありません。自分に合わない訓練を選んでしまうと時間を無駄にすることになります。自分の将来のキャリアにどのように役立つのか、事前にしっかりと考えて申し込むことが重要です。
以上、私自身が経験した職業訓練のメリットとデメリットについて具体的にご紹介しました。ただし、ここで述べたことは私の体験に基づくものであるため、全ての人に当てはまるわけではありません。
職業訓練に参加する前には、自身の目的や目標を明確にし、どういったスキルを身につけたいのか、どのようにその訓練が将来につながるのかをしっかりと考えてから決めることをおすすめします。
どの道を選ぶにしても、自分自身が納得した上で決定することが一番大切です。
4. あなたはどっち?職業訓練に向いている人・向いていない人
職業訓練とは、国や自治体が提供している制度の一つで、新たなスキルの習得や能力向上を支援するプログラムです。さまざまな分野で展開されている職業訓練で、プログラミングやデザインなど幅広い分野が含まれています。
しかし、職業訓練は全ての人にとって最良の選択とは限りません。ある人にとっては、新たなスキルの習得や転職を目指す手段として理想的なものである一方、別の人にとっては必ずしも適しているわけではないのです。
それぞれの人が抱える状況や目的、適性により、職業訓練に向いている人と向いていない人が存在するのです。
4-1 職業訓練に向いている人とは
まず、職業訓練に向いている人とは、どのような特性を持つ人なのでしょうか?これには「新たなスキルを習得したいという強い意欲がある人」、「時間的な余裕がある人」、「自分で学習することが得意な人」などが含まれます。
新たなスキルを習得したいという強い意欲があれば、限られた期間で集中的に学ぶことが要求される職業訓練に対応でき、限られた時間内での能力向上を目指すことが可能です。
また、自分で学習を進められるスキルも重要な要素の一つです。職業訓練は自己啓発の一環であり、自発的に取り組む姿勢が求められます。
4-2 職業訓練に向いていない人
一方、職業訓練に向いていない人とはどんな人でしょうか。該当する特性としては「短期間でのスキルアップを望む人」、「一定の時間枠内での学習が困難な人」、「自己管理能力の低い人」が考えられます。
職業訓練は一般的に初心者、入門者でもついていけるようなカリキュラムが組まれていることが多いです。ですので場合によってはすでに知識があることを学ばなくてはいけないこともあります。自分の学びたいことだけをなるべく時間をかけずに効率的に学びたい人には向かないでしょう。
また、職業訓練は一定の期間、一定の時間を費やすことが前提となっているため、時間的な余裕がない人には負担となる場合があります。さらに、自己管理能力の低い人は、遅刻や出席率に関しての制約が厳しい職業訓練では学び続けることが難しいでしょう。
5. 職業訓練にも色々ある。多種多様な職業訓練
職業訓練で学ぶ場合は「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2つの中から開催されている訓練を選ぶことが一般的です。職業訓練は他にも、学校卒業者が有料で通える学卒者訓練、細かい配慮のされた障害者訓練、在職者のための短期職業訓練もあります。
5-1 職業訓練の期間
職業訓練の期間は大体2ヶ月〜6ヶ月の訓練が多いですが、中には1年や最長で2年のコースなどもあります。私が受けたコースはフラワーデザインが3ヶ月、日本語教師が5ヶ月、WebデザインとWebマーケティングが6ヶ月、アパレルパタンナーが1年でした。
5-2 職業訓練を受けられる学校
職業訓練を受けられる学校には施設内訓練と委託訓練があります。
東京都を例にとって説明しますが、施設内訓練は都が設立した都立職業能力開発センターという施設で行われ、主にものづくり系の訓練ができます。
私が受けたアパレルパタンナーの職業訓練も足立区にある城東職業能力開発センターで行われました。建物は新しく、他には木工科や電気工事科などがあり、秋には技能祭と呼ばれる文化祭のようなイベントもあって、さながら高校のような雰囲気でした。入校時期も1月、4月、7月、10月と決まっており、1年以上のコースは4月入校のみなので雇用保険を受けながら受講したい方は離職するタイミングなどスケジュールをしっかり調整しておく必要があります。
委託訓練は東京都が民間の教育訓練機関に委託して実施される訓練で、毎月のように様々なコースが実施されています。主に情報、医療、福祉、サービス、事務系のコースが用意されています。私が受けたWebデザイン、日本語教師、フラワーデザイン、Webマーケティングのコースは全て委託訓練です。
施設内訓練 | 委託訓練 | |
概要 | 都立職業能力開発センターが実施する訓練 | 東京都が民間の教育訓練機関に委託し実施する訓練 |
訓練期間 | 2ヶ月〜2年 | 3ヶ月〜2年 |
主な 入校時期 | 4月、7月、10月、1月 | 毎月 |
授業料 | 無料(テキスト代などは自己負担) ※一部の1年以上の科目は有料 ※有料科目は選考料がかかる | 無料(テキスト代などは自己負担) |
主な訓練内容 | 機械、建築、造園、電気、塗装、印刷、ファッション関係など | JAVA、WEBデザイン、介護、医療、財務、総務、旅行、 貿易、不動産関係など |
5-3 ITからネイルまで:多種多様なコース
上で述べたように職業訓練には多種多様なコースがあります。ハローワークに行ってパンフレットでよく目にするのは事務系、介護職などの福祉系やWeb系、IT系でしたが、なかにはネイリストやフードコーディネーター、カラーセラピストなどのコースもあり、世の中には本当に色んな職業があるんだなあ、と感心した記憶があります。
6. 通学だけじゃない!eラーニングコース登場で全国から職業訓練受講可能に!
令和3年より、通所せずに受講できるeラーニングコースが新設され、条件を満たせば全国どこからでも職業訓練の受講が可能になりました。ここではeラーニングコースの概要についてお伝えします。
6-1 eラーニングコースとは
eラーニングコースの特徴
・全国各地から受講可能
・受講料無料(テキスト代等の実費は必要)
・受講にあたり必要な設備、インターネット接続環境、パソコンスキル等については各コースにより差があるため要確認
・一定の要件を満たせば、職業訓練受講給付金を受給しながらの受講が可能
6-2 eラーニングコースで学べる人
eラーニングコースで学ぶには一定の条件があります。
・育児・介護中の方
・通所可能な範囲に訓練実施機関がない方
受講申込みを希望される方は、居住地を管轄するハローワークにて求職申込みおよび職業相談が必要です。eラーニングコースの対象者については、今後修正される可能性もありますので、詳しくはハローワークでご確認ください。
6-3 eラーニングで勉強できる主なコース
eラーニングですのでやはりWeb系やIT系のコースが多い印象ですが、 下記のように様々なコースが用意されています。
eラーニングで勉強できる主なコース |
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Web・映像クリエイター養成科 |
初めてのAI活用法、Excel、Word、PowerPoint実践科(短時間) |
地域で活躍できる!広報担当者養成科 |
Java・Pythonプログラミング科 |
基礎から実践まで幅広くWebデザイン養成科 |
ビジネスPC・簿記総務科 |
VBAプログラミング実践科 |
詳しいコースを検索したい方は、下記のハローワークのコース検索で<詳しい検索条件を開く>をクリックし、<フリーワード>検索の欄に”eラーニング”と入力して検索してみてください。
また、公式ではないですが、私がWebマーケティング関連の職業訓練を受けたDXUPが制作したコース検索サイトが手前味噌でなく検索しやすくてとてもおすすめです。
6-4 実際に受講したコース
1年のアパレルパタンナー科の職業訓練を経て、無事アパレル企業への転職に成功した私ですが、父の介護を理由に離職することになりました。介護と両立できる職を考えた私は、コロナ禍で増えたフルリモートで働ける仕事を探していました。
そんななか、ハローワークで完全eラーニングの職業訓練が新設されたのを知り、リモートワークが多そうなWeb系、特に収入のupが期待できそうなWebマーケティングの職業訓練を受けてみようと思い立ちました。同時期のスタートでいくつか同様のコースがありましたが、オンライン見学での印象が良かったDXアップという会社のコースを受けることにしました(正確には「初心者OK Web担当・デイレクター・マーケター養成科(eラーニング)」というコースでした)。
完全eラーニングということもあり、最初は一人で進めることへの戸惑いや、通学コースのように疑問をその場で講師に確認できない歯痒さなどがありました。しかし、Slackを使っていつでも質問ができたり、週に1度のZoomでの対面授業の際にわからない点を丁寧に教えてくれたため、徐々にオンラインでの学習にも慣れていきました。
コースはかなり実践的な内容でしたが何度でも見返せる動画も多く、初心者でも安心して一歩ずつ取り組めるような工夫がされていました。なにより、ワンオペ介護中の身である私にとって、隙間時間に学習できるフルフレックスタイム制の職業訓練は非常にありがたかったです。
7. 職業訓練で学んだことを就職に活かすために
職業訓練を5回受けた後、私が向き合ったのが就職活動です。職業訓練はスキルアップの一環であるとともに、未来への道しるべでもあります。勿論、職業訓練を受けることで私たちは新たなスキルを習得しますが、実際の就職にはそれだけでなく人間力も求められます。リアルな体験談として、私が就職活動を始めるまでと、職業訓練を活かした面接対策、最終的な就職結果に至るまでのプロセスを紹介したいと思います。
7-1 職業訓練の就職率について
公共訓練の実質的な運営主体である厚生労働省は、毎年度、訓練受講者の就職率を公表しており、 その値はおおむね70〜80%台となっています。しかしこれはあくまで全体の平均値ですので、就職率が高い訓練を選ぶという戦略もあります。しっかり就職に結びつくよう、ハローワークの訓練相談窓口でしっかり相談に乗ってもらい、後悔のない訓練を選びましょう。
7-2 職業訓練で学べることは就職につながる基礎知識
職業訓練では、ニーズのある職種に必要な技術や知識を学ぶことが可能です。例えば、IT関連の職種ならプログラミングの基礎知識、ネットワーク管理の方法などを学ぶことができます。あるいは、経理職なら会計に関する知識、税法、財務分析などを学ぶことができるでしょう。
これらの知識は就職した後も必要とされ、一生モノのスキルになります。そして職業訓練で学んだことを就職に活かすためには、学んだ知識や技術を活かす機会を見つけることが必要です。
「自分がどのように生かすことができるのか」を考え、自己アピールの材料として使うことが大切です。また、職業訓練で学んだ知識を深め、専門性を高めることで、より良い職場を見つけやすくなります。職業訓練で身につけられる知識は専門性という観点からは基礎レベルであることも多いため、持続的に技術や知識をアップデートし続ける意識を持つことが重要です。
8. まとめ
私の職業訓練は全てハローワークを通じて受けました。ハローワークでは、受けられる訓練の種類や内容、受講するための条件などが詳細に説明され、私にとって非常に有用な情報となりました。また、ハローワークのスタッフの皆さんは親切丁寧で、私の職業訓練選びをサポートしてくれました。
また、職業訓練を選ぶ際の基準は人それぞれですが、重要なのは「自分がどのようなスキルを身につけたいのか」、「そのスキルはどの程度需給があるのか」、「自分の興味・関心があるか」などを考えることです。また、訓練時間や場所、費用も視野に入れた上で選択することも重要です。ただしこの一つ一つをクリアしていても、必ずしも自分に最適な訓練だとは言えません。多様な視点で自己分析を行い、自分が本当に必要なスキルを獲得することが大事です。
私が職業訓練を受けた経験から一つ言えることは、あきらめずに続けることの大切さです。スキルアップは一朝一夕にはできません。時間をかけて自分を磨いていくことが大切です。また、職業訓練はスキルアップの場としてだけでなく、新たな人脈作りの場としても活用できます。一緒に学ぶ仲間ができることで、互いに切磋琢磨しながらスキルアップを目指すことができます。皆さんも、職業訓練を機に新たな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。